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Fashion talk
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2007.9.5
   
◆インタビュー
きもの工房 扇屋

家田貴之さん
 
扇屋は、悉皆(しっかい)屋さんです。
悉皆……耳慣れない言葉ですね。
着物のさまざまなケアやメンテナンス、リフォームなどさまざまな要望を請け負う、お店や人を指します。
今回は、そんな悉皆業を100年以上も営んでいらっしゃる扇屋の4代目、家田貴之さんに、現代の悉皆屋さんのお仕事、技術の伝承など、さまざまなお話を伺いました。
 
今回お話を伺った
きもの工房 扇屋の家田貴之さん


  ホームページ:
   http://www.ougiya.tv/

  きもの工房 扇屋
 
 
■着物のメンテナンスチームのディレクター

悉皆屋さんとして100年……具体的に悉皆屋さんとはどういったお仕事なのでしょうか。
「悉皆屋というのは、着物のメンテナンスチームのディレクターといえます。
売るのは呉服屋さん、そのあとのシミヌキや染め替え、リフォーム……ありとあらゆるリクエストを受けて、専門の技術者に仕上げてもらうのが悉皆屋さんというわけです」
と、家田さん。

悉皆の意味には、「一つ残らず全部。ことごとく」というものもあります。
つまり悉皆屋さんは、着物のメンテナンスに関するすべてをお願いできるお仕事なのです。

家田さんはそんな悉皆屋さんであると同時に、優秀な技術者でもあります。
京都繊維染色高等職業訓練校卒業後、一級染色補正技能士の資格を取得し、扇屋4代目として工房を継承。
それから東京都知事より知事賞を受賞、東京都能力開発協会からは優秀技能が評価され、 今日まで6回受賞など、高い評価を受けています。
もんじゃ焼きで有名な佃に店を構える扇屋。店の前を通りかかってケアを依頼する個人客も多い。
 
 
■自分の力がベストなときに、弟子を取る

そんな家田さんは、まだ30代の若さ。
しかしすでに、お弟子さんがいらっしゃいます。
お弟子さんを取るといえば、もっとお年を召した方、という印象がありますね。
いつからお弟子さんを取られているのでしょう?

「3年前からですね。
でも、実は20代のころから、機会があれば弟子を取りたいと思っていました」

そんな若いうちから?

「私たちの作業の中には、地直し(生地を美しい状態に戻すこと)など、針の先に何色も入れていくものもあります。
こうした作業は目が命。
ですから自分が若いうち、つまりベストな状態のうちに、技術を伝承したいのです」
地直しの作業。絞りの着物の小さな色落ちに、細い筆で色を足していく。
 
 
■多くの人に、正しい着物のケア方法を知ってほしい

そして家田さんの教えを受けているのは、お弟子さんだけではありません。

着物が好きな女性、プロの呉服屋さん、仕立て屋さん、着付け教室の先生、雑誌のコーディネーターの方、アンティークショップの方……。

「約10年くらい前から、シミヌキ教室も開いているんですよ」

きっかけは、とあるテレビ番組でした。

その番組には、着物のケアのプロと称する人が登場。
「着物のシミは、固く絞ったお絞りでたたきましょう」と教えていました。
これを見た家田さんは仰天。
絹などにそんな手当てをしたら、絹の繊維が傷つき切れることもあるからです。

いったん切れてしまった繊維は、いくら専門の技術者でも直せません。
100%の修繕はできませんから、目の錯覚を利用してごまかす方法しかないのです。

家田さんはちょうど職業訓練指導員の免許を取っており、きちんとしたケア方法を知って欲しいう思いから教室を始められました。

それにしても、着物を着られる女性たちというのはわかるにしても、なぜ呉服屋さんや仕立て屋さんまで?

「お仕事のとき、お客様の質問に答えられないので勉強にいらっしゃっているんです」

着物を楽しむ人、着物に関する仕事をする人、すべての人に正しい知識を広めたい。
そんな家田さんの思いは着実に広まって、毎回教室は大盛況だそうです。
2007年7月に開かれたしみ抜き教室開催の様子。実際に自分の着物のシミを抜く実習も。
 
 
■着物を自由に楽しむ人を応援

このように家田さんは悉皆屋さんとして、着物のケアの技術者として、さまざまな活動を行っていらっしゃいます。
それでは、悉皆屋さんや着物業界を取り巻く現状はどうなのでしょうか。

「業界全体は、決してよいとは言えませんね。
ここ10年くらいで悉皆屋のみならず、着物問屋、呉服屋、京都の老舗着物会社など、着物関連の仕事をする人が減りました。
やはり着物は高級品、長く続く不景気のあおりを受けたんです」

確かに、着物は高級品の印象が強いですね。
その上、季節によって選ぶべき柄や素材があるなど、たくさんのルールに恐れをなしてしまいます。

「もっと楽しんだらいいと思いますよ。
極論、『左前』に着なければいいくらいで(笑)。
というのも着物イコール『着る物』ですから、自分流のオシャレを楽しんでいいです」

着物のプロにそう言っていただくと、もっと気楽に着物が着られそうです。

「もちろんオフィシャルな場、お茶席や発表会などでは、シーンにふさわしい着物選びやルールも重要視されます。
しかし、それ以外は自由に楽しんでください。
ファスナー付の着物、革の帯など、斬新な着物やコーディネイトもできるんです。
ぞんぶんに遊んでください」

着物を着るとき、臆してしまうのにはもうひとつ、「汚したら大変!」という思いもあります。

「うちでもインターネットを通じ、北海道から沖縄まで様々なご依頼を受けています。
一着一着、お客様が大事になさっている着物ですから、どのような方法が最善か、しっかり吟味して対応しています」

家田さんのような悉皆屋さんが、私たちの心配を解消してくれそうですね。
 
 
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